- --日東皮革さんはどんな事業を行っているのですか?
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浅草にウチの本家にあたる宮本卯之助商店という
太鼓・和太鼓・神輿の製造を行っている会社があるのですが、
太鼓の革は、一般的な革とは製造方法が異なる為、
そこで必要な太鼓の革を日東皮革が製造しています。
- --どのようなところで使われているのでしょうか?
-
宮本で作られた楽器は、歌舞伎・能楽はもちろん、
相撲協会や神社仏閣、宮内庁などでも使われています。
- --宮本卯之助商店、聞いたことがあります。
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ホームページを見るとわかりますが、
太鼓に限らず、様々な伝統工芸品を扱っています。
私の祖父の兄が本家、私の祖父が分家として
太鼓の皮を扱い始めたのがルーツになります。
- --祖父の代からということは、だいぶ長く続いてらっしゃるんですね
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第二次世界大戦の頃は、皮革産業が軍需産業に指定され、
陸軍の管理下に統合されたこともありました。
- --皮が軍需産業というイメージが沸かないのですが・・・
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たとえば、靴、そして背嚢・・・今で言うリュックサック、
ベルトや鉄砲のストラップなど、それらはすべて革で作られていました。
時代の変化に対応していろいろな物を作ってきましたが、
今は皮を1次加工して塩漬けにして売るというのが全体の2/3
太鼓の皮製造が全体の1/3の事業を占めています。
- --御社で作っている太鼓の革は、
一般的な革と製造方法が違うとのことですが、
なめし方などが違うのでしょうか? -
そうですね、正確にはなめしではなく、
酵素脱毛という手法になります。
米ぬかの中にある酵素を使って皮の毛穴を開き、
毛を削り落とすという昔ながらの手法を使っています。
- --その手法を使うと何か変わるんですか?
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一般的ななめしのように、化学薬品を使わないので皮の強度が落ちません。
革にダメージも与えないし、中に油脂がきちんと残り、
繊維層の中でその油が結合して強固な革質になります。
- --天然のなめし製法というわけですね、
他にこういった薬品を使わない製法はあるのでしょうか? -
似たようなものでは、インディアンタンと呼ばれる革があります。
牛革を川に半月くらい漬けておき、
水中のバクテリアの力を借りて毛穴を緩め、脱毛する手法ですね。
国内でも姫路の白なめし革というものがあります。
- --革の堅牢さが重視される分野では、この天然手法が欠かせないということですね。
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太鼓の作り方には2種類あります。
1つは、ウチでもやっている米ぬかを使う手法、
2つは、なめしの途中までやって太鼓にする手法。
薬品を使ったなめしは皮を柔らかくする薬品を使っているのですが、
繊維層をほぐして柔らかくし、それを再度結合させることで
背中や腹などの部位に関わらず、強度を統一化することができます。
しかし、皮本来のもつ強度と比べると、だいぶ弱くなってしまいますので
太鼓に使う皮としては、やはり1のほうが望ましいですね。
- --太鼓の製造について伺ってもよろしいですか?
-
実際の製造は本家である宮本が行うのですが、
まずはウチで酵素脱毛を行い、太鼓の革の形になるよう円形に断裁し、
それを型に当て、しぼりながら元型を作っています。
- --しぼる?とは何でしょうか?
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濡れて柔らかくなった革を型に当て、
まわりから引っ張っていくことを絞りと言います。
この太鼓の場合、この直径よりも20センチくらい大きい皮を張り、
仮の形を作って保管しておきます。
そして新しい太鼓の注文がきたら
保管してあったものを一度濡らして柔らかくし、
叩いて音を確認しながら絞っていき、最後に鋲を打つことで完成させます。
- --叩きながら絞っていくのですね。
-
太鼓の革は天然ものなので、全方向に同じ強度で張るだけでは
綺麗な音を出すことができません。
場所によって革の厚さや密度が異なる為、
単純に張っただけでは叩く場所によって音が違うといった問題が出てしまいます。
太鼓はどこを叩いても同じ音がしないといけません。
ここの音が違う・・となったら、その方向を締めたり緩めたりして音を整えます。
バランスがよくなったら、今度は太鼓を立て、
人間の足で思いっきり太鼓を蹴ります。
- --蹴るんですか!?
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最初は蹴った勢いで革が緩むので、
再度革を張って音の調整を行います。
叩いているうちに音が変わってもいけませんし、
叩いた場所によって音が違ってもいけません。
そういった問題が出ないようにするために、
音を確認しながら、調整を行う必要があるのです。
- --やはり季節によっても音が変わりますか?
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冬場の乾燥や、梅雨の湿度でも音が変わります。
ですが、それが顕著に出るのは太鼓よりも鼓(つづみ)ですね。
鼓は張りが一定なので、乾燥の度合いで音が大きく変わります。
歌舞伎を見ていると、膝元に電熱器がおいてあるのを見たことがありませんか?
あれは暖房ではなく、乾燥の度合いを調整するために置いてあるのです。
家元さんによっては、つづみの使用時間は40分が限度で、
40分使ったら弟子の練習用に流してしまうという人もいます。
逆に、使い慣れた道具でないと自分の出したい音が出せないということで、
同じつづみを何年も使い続けるような家元さんもいます。
- --たまに2メートル級の太鼓を見たりしますが、
ああいった皮はツギハギで作られているので
強度で劣る・・・といったこともあるのでしょうか? -
いえ、ああいった特大の太鼓も1枚革で作られています。
大型太鼓の注文が入ると、
全国の同業者ネットワークにその情報を流して使える皮を探し出します。
食肉の牛ではサイズに限界があるため、
農業関係の団体、たとえば畜産試験場などで育てられた
試験飼育用の牛の皮を使ったりしますね。
一般的な大きさの牛は2トントラックで運ばれてくるのですが、
大型トラックでないと運べないような大きさなど、
中には食肉では考えられないような凄い大きさまで育つものもいます。
そういったサイズ感の牛が、日本のどこの市場に流れるのか、
同業者同士で協力して常にアンテナを張るようにしています。
- --これからやっていきたいことはありますか?
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若い人を募って、伝統芸能を守っていきたいと考えています。
私たちは文化的製品を軸に事業を行っていますが、
時代は変化してきており、「プロ・アマチュア」という線引きから
「プロ・セミプロ・アマチュア」という線引きに変化していっています。
それに、他国から安い太鼓が入ってきたり、
ハワイやロサンゼルス、ロンドンなどでも太鼓の需要が上がってたりします。
それにあわせて、求められる音にも変化があり、
ドン!がいいのか、ドーン・・・!!がいいのか、
多様化したニーズに答えられるよう研究を続けていかねばなりませんね。
守り続けるのも文化であり、時代の変化に応じて変わっていくのも文化ですから。
創業大正3年。東京より移転し草加市吉町に工場を構えたのが昭和10年でした。
太鼓用革の製造を行っており、良質な原料皮の調達を追求するうち、現在ではEUなど海外からの原皮も扱うようになりました。創業100年、日本の伝統文化を守る一翼を担う仕事と自負しています。
- 所在地
- 草加市吉町3-4-56
- 電話番号
- 048-927-3521
- URL
- そうか革職人会 日東皮革 株式会社